クラッシックというジャンルの音楽は、基本的にはヨーロッパの音楽です。確かに19世紀後半になると、非ヨーロッパ系の作曲家も出現し、その後グローバル化が進んでいく訳ですが、やはり基本的にはヨーロッパの音楽であり、白人の音楽(ホワイトミュージック)だった訳です。
エルガー(1857〜1934)はイギリスの作曲家です。クラッシックが基本的にはヨーロッパの音楽だと言っても、その中心地はドイツとオーストリアとなります。何故ならば、クラッシック史上最も偉大な作曲家であるバッハ、モーツァルト、ベートーベンが活躍した場所だからです。
イギリスというのは、そういう意味で言うと、クラッシックの中心地から外れた辺境の地であると言えるかもしれません。
しかし管理人は、実はイギリスには素晴らしい作曲家が居たと思っています。古くはバロック時代のパーセル、そして19世紀後半以降に登場した、エルガー、ヴォーン・ウィリアムズ、ブリテンなど。
特にエルガーは、地味な印象ではありますが、噛めば噛むほど味の出る素晴らしい曲を残した作曲家です。
この愛の挨拶という曲は、エルガーが8歳歳上の妻アリスの婚約に贈り物として作曲した曲。アリスはエルガーのピアノの生徒(あるいは弟子)だったそうです。とても有名な曲なので、聴きたことがある方も多いのではないでしょうか?
本当に美しいメロディーを持った小曲です。このメロディーを聴いたら、エルガーの奥さんに対する深い愛情と息づかい、そして優しいまなざしが感じられるのではないでしょうか?ああ、そうか、エルガーはこんなにもアリスを慈しんでいたのか。エルガーのアリスへの暖かい想いが生き生きと感じられます。
確かに素晴らしい音楽は生き物と一緒です。そこには生命が感じられます。正に生きている訳です。「愛の挨拶」もそんな曲のひとつだと思います。
エルガーは、この曲を一生懸命作曲したのでしょうか?そりゃーまあ、奥さんになる人のために一生懸命作曲したんだろうけれど、何というか、この曲には作為を超えたものがあります。エルガーは、どこからかこのメロディーを発見して、五線紙に写しただけなんじゃないか?と想像します。あるいは、ただ単純にふっと湧いてきたものをつかまえただけというか。本当のところはわかりませんが。
常日頃から管理人は、本当に優れたメロディーというのは、ごく自然で作為を感じさせないものではないか?と感じています。そして、本当に優れたメロディーは生きています。生き生きと息づいている。
エルガーも奥さんにアリスもとっくの昔に亡くなっていて、今は影も形もありません。でもこの曲は今もで生き生きと息づいています。言い方を変えれば、ふたりはこの曲として生きていると言ってもよいのではないか。
こういう曲に管理人はソウルを感じる訳です。
この曲は、エルガー自身がいろいろな楽器のバージョンを残しているようです。まず、バイオリンとピアノのバージョンを聴いてみましょう。
個人的に管理人はチェロではピアノのバージョンを好みます。この曲のメロディーは、チェロで弾かれる時一番美しくとどろくように感じるからです。