日本の作曲家の西村朗氏は、クラッシック名曲の第1の条件として、メロディを挙げています。
確かにその通り。管理人もそう思います。
音楽の要素はメロディのみにあるのではありません。管理人はそのことをとても重要だと思っています。
しかし、メロディが音楽の重要な要素であるのは間違いありません。そして、クラッシックの初心者の方々にとって、1番フックとなり得るのはやはりメロディでしょう。
さて、メロディがどう展開していくかということはすごく重要だと思います。素敵な素晴らしいメロディを思いついたとして、それをどのように展開させていくのか?メロディはそれだけあっても十分ではない訳です。メロディには流れるものです。メロディを十全に流し展開させていくことで、ひとつの曲の世界が成立します。
さてそこで、サン=サーンスの白鳥を取り上げます。この曲は、動物の謝肉祭という、クラッシックの曲としてはいくぶんというか、かなりふざけた曲集の中にある一曲で、この曲だけふざけていないという(笑)。この曲はチェロとピアノの為の曲として書かれています。その美しいメロディ故にチェロの名曲として広く知られた曲です。聴いたことのある方が多いのではないでしょうか。
出だしはピアノのパートから始まりますが、このピアノのパートは白鳥の足を表現していると言われています。
曲が少しだけ進むとチェロが入ってきますが、これは湖(あるいは池?)の水面の上に出ている白鳥の姿を表現していると言われています。
湖面から上の優美な白鳥の姿はチェロで、水の下のジタバタ動かしている足の部分をピアノが表しているという訳です。
聴いてみていかがでしょうか?管理人は、優美さとジタバタが矛盾することなく、結果としてこの上なく優美な白鳥の姿を表現していると感じます。そしてその姿は、決して甘すぎることなく、凛としていて清楚です。
この曲ではチェロのパートがメロディを担当しています。サン=サーンスは、白鳥をイメージして、まず冒頭のメロディを思いついたのでしょう。
しかし、冒頭のメロディだけでは白鳥の姿を描くことは出来ない。そこでサン=サーンスは、このメロディを多様に変化させ(それは第2、第3のメロディとも言えると思います)、白鳥の姿を描いていきます。メロディを多様に変化させ、流し、展開させて、ひとつの世界を創造していきます。そして、まるで円環を描くようにしてこの曲は終わります。
それはまるで、小さな物語を語っている様です。更にそれは川の流れのように自然です。サン=サーンスは小曲ながら幅広いレンジ(範囲)を設定し、メロディを過不足なく展開させている訳です。白鳥がその羽を思いっきり広げたように十全に描き切っているように聞こえます。
サン=サーンスは、フランスの音楽界にあって、音楽的に保守的で底が浅いと批判されたことがあったようですが、管理人はこの作曲家が好きです。この透明な美しさが持つこの曲を僕はとても愛します。