クラッシック入門名曲100選 ラベル ボレロ

クラッシック入門名曲100選

ラベル(1875~1937)はフランスの作曲家です。

(既に紹介した白鳥を作曲したサン=サーンスもフランス人ですね)

フランスには、素晴らしい作曲家が何人も居ますが、ラベルはフランスにおける最も素晴らしい作曲家のひとりでしょう。

ラベルは不思議な作曲家です。いや、不思議、というよりは「奇妙な」作曲家と言えるかもしれない。ラベルのお父さんは、時計職人だったとか。その血筋のようなものもあるのか、精密な時計を作るかのように、精密な曲を作曲しました。その中にはもうため息が出るほど素晴らしいものがいくつもありますが、ラベルさん、マジであなた大丈夫なんですか?と思わず心配になるような危ういというか、奇妙な曲もいつくか存在します。

今回ご紹介するボレロという曲は、ラベルの作品の中でも、間違いなく最も有名な曲でしょう。様々な観点から言って、クラッシック入門名曲100選になくてはならない超絶名曲です。いわゆるポピュラー名曲入りしている曲でもあり、クラッシックに馴染みのない方でも聴いたことのない人はいないんじゃないかな?

そんな事情もあり、安心、安全に聴ける曲かと思われるかもしれませんが、ややややや、それは誤解というものであって、実は何気にこれはヤバい白物なのではないか?と管理人は考えています。

では、曲を聴いてみましょう。まず、この曲に特徴的なのは、リズムです。小太鼓(スネアドラム)の比較的ゆっくりとしたリズムから曲が始まります。

タンタタタ タンタタタ タンタン

タンタタタ タンタタタ タタタタタタ

こんなリズムです。最後の2小節を除いて、このリズムが変わることなく続きます。

このリズムに、とても魅惑的なメロディーが乗ってきます。ボレロを構成するのは、基本、たったふたつのメロディーです。変わることのない一定のリズムに乗せて、まずひとつめのメロディー、ふたつめのメロディーが手を変え品を変え奏でられていきます。

ボレロと言う曲の魅力は、やはりこのふたつメロディーにあるんだろうなぁー、と思います。これは何と言うか、普通の美しいメロディーとは異なります。なんだか少し変な感じなのです。でも、その変な感じにものすごくひきつけられてしまう。何と言うか、この世とは別の次元のメロディーと言うか。異次元の不思議な不思議なメロディーなんですね。

ラベルはこのメロディーを、まぁ、思いついたというか、作曲した訳ですが、管理人は、ラベルさん、あなた、このメロディーを一体どこから持って来たのですか?と聞いてみたい。ラベルは、このメロディーを、なんだか普通でない場所(世界)から持って来てしまったのではないか?さらに管理人の感覚では、いささか健全とは言いかねるニュアンスも感じるのです。

更に、特筆すべきは、このふたつのメロディーは、奏でられる楽器の数と音量の増加、そして最後のクライマックスでの短めの展開を除けば、繰り返しに終始しているだけで、ほとんど曲としての展開がないということなんです。強いて言えば、展開のない展開と言うか。先に述べた一定のリズムに乗って、メロディーがぐるぐるぐるぐるループしていく。ループしていくだけで、どこに行く訳でもない。クラッシックの伝統的な文脈から考えれば、これは尋常な曲ではありません。極めて破天荒な曲であるのは間違いない。

ところが、ラベルは奇妙で危うい感覚を持つ人でもあったと同時に、熟練した職人的感覚をもった並外れた職人的作曲家でした。その職人的感覚を駆使して、こんなに危うい感覚の曲を、この現実世界に、ポピュラー名曲と言われる程のポピュラリティを持つものとして機能させてしまっている。これは驚くべきことで、正にラベルは音の魔術師と言うべき人でしょう。実際、この曲は魔術的な曲であると管理人は思います。

実はこの曲。バレエ用の音楽として、依頼、作曲された曲なんですが、バレエなしで、コンサートホールで演奏されることが圧倒的に多いと思います。ラベルとしては、あまりに奇妙で破天荒な曲なので、世界中のオーケストラは演奏を拒否するだろうと予想していたそうです。ところが予想に反して、大人気となってしまい、世界中で演奏されるようになったとか。一番驚いたのはラベルだったようです。

この曲に関して、こんなエピソードがあります。ボレロの初演の際に、この曲の演奏が終わって、聴いていたひとりの女性が、「頭がどうかしてるわ!こんな曲を書くなんて、本当にどうかしてるわよ!」と叫んだ、というのです。この話しをラベルが伝え聞いた時、ラベルは「その人は、よくわかったんだ」と言ったというのです。この曲の本質が示されているエピソードではないでしょうか?

管理人は、クラッシック音楽の中には、劇薬であり、これはヤバいんではないか?という曲もたくさん存在すると思っています。子どもに聴かせちゃいけません!みたいな。

管理人は、このボレロという曲も、実はそんな曲のひとつだと思っています。一見、お行儀のよい曲のように聴こえるかもしれませんが、それは見てくれだけのお話し。

クラッシックは全体的に言って、全然お行儀のよいジャンルではありません。でも、何故か、クラッシックは高尚なジャンル、というイメージがありますよね?なんでだろう?確かにそのようなイメージを与えると思える曲も多数存在しますが、そればかりでは全然ないんです。それは曲を聴けばわかることです。

「高尚な」というイメージによって、クラッシックの敷居が高くなってしまうことはもったいないことだ。今後も、そんなイメージを破っていける曲も紹介していければ、と思っています。

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