しばらくオーケストラの曲が続いていましたが、今回は歌曲(リート)をご紹介したいと思います。
シューベルトのアヴェ・マリアです。
このメロディーを聴いて「知らない」という人は居ないんじゃないか?というくらいの超有名曲ですね。クラッシックの中でも、指折りのポピュラー名曲という訳です。だから油断するかもしれませんが。。。
これ、ほんとすごい曲なんです。いや、マジですごすぎる。真に神秘的、かつマジカルな曲なんです。
聴いてみてください。
誰でも知っているめっちゃ有名なメロディーですよね。実に美しいメロディーだ。
しかし、このメロディーは、単に美しいだけでは片付きません。この中には尋常でない何かがある。
このブログでは、今後シューベルトの曲をいろいろ紹介していきたいと思っていますが、シューベルトの書く音楽は本当に深いです。
なぜ深いのかというと、音楽が出てくる場所が深いから、というのが、管理人がかねてから感じているところです。
メロディーというのは音楽のひとつの要素ですが、メロディーに関しても、出てくる場所がとんでもなく深いんです。大地の深い深いところから、というイメージでしょうか。。。方向性から言うと、シューベルトのメロディーは、上から降りてくる、というよりも、下から、大地から湧き上がってくる感じなのですね。
でも、実際のところは、シューベルトの中から出てくる訳で、シューベルトという存在の深い深いところから、と言った方がよいかもしれません。
確かに、シューベルトの書いたメロディーの中には、割合とライトなものも結構あります。でも一方で、底なしに深いところから出てきたようなメロディーを持つ曲も多数あります。
この曲に関して言えば、シューベルトという青年の目もくらむような深い場所から出てきたものであると管理人は感じます。これはもうメロディーとなった祈りです。シューベルトの中の祈りが、メロディーという形になったのではないか?と管理人は考えています。そしてそこには、それなりの理由があるのではないか?
アヴェ・マリアは、シューベルトの晩年に作曲された曲です。シューベルトは、当時としては不治の病にかかっていました。シューベルトは、アヴェ・マリアを作曲していた時点で、確実に、自分の命がまもなく燃え尽きてしまうことがわかっていたと思います。ちなみに、シューベルトは31歳の若さで亡くなっています。
シューベルト最晩年の年は、とんでもない傑作群が作曲された年でしたが、その中には闇の中を彷徨うフィーリングの曲も存在しています。
しかし、このアヴェ・マリアは、そうではない。光に包まれているのです。人間とは多面的なものだと思いますが、この曲では、もう間もなく命が燃え尽きるであろうシューベルトの救いへの願いと祈りが曲に乗り移っている感じがします。シューベルトの祈りは、この曲の中で、おそらくは天に届いている。
実はこの曲の正式名称は「エレンの歌第3番」と言って、ウォルター・スコットの詩のドイツ語訳に、シューベルトが曲をつけたものです。この詩の出だしが「アヴェマリア」と始まるものですから、通称、シューベルトのアヴェマリアとして親しまれるようになったそうです。しかしながら、結果として、その歌詞の内容とあいまって、シューベルト晩年の願いと祈りが込められたものになったのではないか?と管理人は推測しています。
そして、この曲においては、メロディーもすごいがピアノ伴奏もすごい。総じて、シューベルトの他の歌曲もそうですが、この曲のピアノ伴奏は、単なるピアノ伴奏をはるかに超えたものです。
このアヴェ・マリアにおけるピアノ伴奏は、誠に神秘的です。管理人は残念ながらピアノを弾くことが出来ませんが、管理人でさえ弾けそうな単純なものです。いや、音を鳴らす、というだけなら絶対に弾けるでしょう。
このピアノパートも、メロディーと同じくらい深い場所から生まれたものだと思います。この単純至極なピアノパートはあまりにマジカルであり、このマジカルなピアノパートに支えられて、メロディーが少しずつ少しずつ天に昇っていくかのようです。
管理人は、このピアノパートが、この曲のフレーム(枠組み)になっていると思います。ピアノパートがフレームの役割を果たすと同時に、メロディーが天に昇っていく際の階段のような役割を荷っているように感じられます。らせん状に少しずつ少しずつ上がっていく感じですね。
そして、管理人が思うに、メロディーとなった祈りは、確実に天に届いて、天とつながっているように思います。そう感じさせる何かが、この曲にはある。
いや、少し違うかもしれない。確かにつながっているのだけれど、それだけではない感じがします。
フレームであり、らせん階段でもあるピアノパートの中で、天と地が交流している、行き来していると言った方がよいかもしれない。天と地がつながってコミュニケーションしているのですね。
ともかくも、マジカルなピアノパートにマジカルなメロディーが有機的に絡み合って、明らかに何らかの神々しい作用が生じていることは間違いありません。
余計な装飾を一切そぎ落した声楽パートとピアノパートのみの単純な構成のこの曲。単純なのに、いや単純さ故に、この曲は誠にブリリアントかつマジカルです。この曲には神秘がある。一言で言えば、正に「神曲」です。
なぜ、シューベルトにはこんなことが出来てしまったのか?普通、人間にはこんなことは出来ない。シューベルトはまごうかたなき天才中の天才ですが、この曲には天才以上の何かがあります。
シューベルトは、誠に驚くべき、グレイトな作曲家という他ありません。
管理人は、シューベルトに関しては、他にも書きたいことがたくさんあります。
今後、シューベルトについても、いろいろとご紹介出来れば、と思っています。